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107 幸せなお金の使い方

お金と幸福度は比例しない

 

年収2,000万円の人が年収200万円の人より10倍幸せかといえばそんなことはない。資産が5,000万円の人が資産500万円の人より10倍幸せかというと、これもまたそうは言えないだろう。

経済学者の研究によれば年収750万円までは幸福度と年収は比例するが、それ以上年収が増えても同様に幸福度は高まらないという。とかくお金持ちは幸せでお金が少ない人は不幸であると思われがちであるが、幸福度と収入の相関は少ないと言われている。

 

年収が多い人いわゆるお金持ちは、将来における経済的不安はお金の少ない人より少ない分幸せと思われるが、代わりに税金や遺産分割、事業承継など複雑で悩ましい問題を抱えている場合が多い。

国別、都道府県別幸福度調査が行われ、上位に来る国、県は経済的に豊かなところとはいえない。比較的自然環境が厳しいところが上位に来ていることが国や県に共通している。

お金と幸福の関係はお金の量ではなく、お金の使い方により左右されると思われる。そこで書店で「達人のお金の使い方」が特集されていたので、つい関心を持ち購入した。そこに紹介されていた方は、各業界で知られているような人達であった。

 

達人と言われる人だからどんなお金の使い方をするか関心があった。ある人は普段とても忙しいので、自分をリセットするために静かな空間を求めて軽井沢に別荘を購入した。またある人は超高級車を購入し、またある人は世界中に僅かしかない時計を購入していた。

他にも使っているところはあるだろうが、紹介されていたのは高級品への投資であった。共通していたことは更に精力的に仕事をこなすための仕掛けや自分へのご褒美であった。

お金があるから高級品を購入できるのだろうが、達人と言われる人ならば庶民の想像を超えるお金の使い方を期待していたが、意外と普通で期待外れであった。

 

幸せなお金の使い方

 

これまで経済的豊かさが幸福度を表す基準のように思われてきた。高度経済成長期の日本では一生懸命働くことで収入が増え、大型家電製品やマイカー、マイホームを取得することが出来た。これらが幸せの象徴と思われてきた。だから収入と幸福度は比例するといつの間にか潜在意識まで入り込んでしまった。

考えてみればお金の量と幸福度は比例せず、幸福度はお金の使い方によって左右されるはずだ。米国心理学者エリザベス・ダン准教授の論文には、幸せをお金で買う方法が紹介されていた。

 

1. 経験を買う

購入したときは満足度が高いが、物は時間の経過とともに傷つき劣化してゆく。またニューモデルが出た途端に満足度がしぼんでしまう。ところが経験は世界にひとつしかなく比較されることがないので、時間が経っても輝きを失わない。

 

2. ご褒美にする

どんなにご馳走でも毎日食べることが出来ればご馳走でなくなるようにマンネリは幸福度を減少させる。またこれが最後の機会と思うととても愛しく味わい深く感じられる。だから適当に時間や距離を置くことにより幸福度が一層高められる。

 

3. 時間を買う

1日の時間は十分ではないと人生を慌しく過ごしていると、人生に満足できなくなる。また物質的な豊かさを求めるあまり自由時間を犠牲にすれば幸せは感じにくくなる。「時は金なり」として時間をお金とみなすと、労働時間は有益で休憩時間は無益のように思えるが、休憩時間である自由時間に幸せを感ずることが多い。

 

4. 先に払って、後で消費する

金利のことを考えれば支払いはなるべく後で済ませることで金利は有利に働くが、ここではその反対を提唱している。それは来年行われるコンサートの前売り券を購入すると、1年間ワクワクした気分でいられる。このワクワク感が幸せの実感である。また後払いでは楽しみは既に終わり支払いの痛みだけが残る。

 

他人に投資する

 

米国心理学者エリザベス・ダン准教授の論文で幸せをお金で買う方法の5番目にも紹介されている。他人への投資というと「寄付」が浮かぶが、寄付というと金持ちのおごりのように受け止められている。

しかし、たとえ金額が少なくても他人のために使うと自分の幸福度が上昇する。それは自分のために使用するより幸福度は上昇するといわれている。

 

強制的な寄付行為では幸福度は上昇しないが、自発的な寄付行為では幸福度は上昇する。年末になると募金協力が回覧され、一人当たり最低金額が記され更に目標金額まで設定されている。このような方法では集まる金額も少なく、協力した人は満足していないと思われる。

 

寄付は寄付される相手の顔が見えたほうが良い。寄付をする行為により本人の幸福度は上昇するが、相手とつながりたいという欲求が充たされると更に幸福度は高まる。決して恵んでやるなどと上から目線の姿勢ではなく、役に立っている実感が得られるからだ。

 

海外では寄付行為がニュースに取り上げられている。投資家のウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツ等が莫大な寄付行為をしたことは有名である。大金持ちはそのくらいの寄付をしても生活に困ることはないと思うが、おそらく寄付によって自分が幸せになることを知っているから行われたのだろう。

 

日本でも宝くじの当選券を被災地に匿名で寄付した人がいた。また「伊達直人」と称して小学校にランドセルを寄付したことがニュースに取り上げられた。それから決して裕福ではない老婦人が清掃の仕事をしながら貯めたお金を寄付したことがあった。

 

ソニー元社長大賀氏も音楽振興を願い軽井沢に退職金を寄付して、大賀ホールが建設されたことは広く知られている。

また出身校から寄付の依頼が来る。甲子園に出場する、校舎を建て替える、周年記念行事を行うときに依頼が来るだろう。街角で求められる寄付より身近に感じて寄付に応じた人もいるだろう。

 

寄付金控除

 

寄付をすると税金が少なくなる制度が寄付金控除である。寄付金額から2,000円を除いた金額が所得控除の対象となる。給与所得者は源泉徴収ですでに税金を払っているので、確定申告をすることで税金が戻ってくる。

また寄付金特別控除といって税金が控除される税額控除制度が導入された。これまでの所得控除と比較して有利な方を選択することが出来る。

 

しかしどこに寄付しても控除が受けられるわけではなく、国、地方公共団体、特定公益団体に寄付した場合のみである。国がお墨付きを認めたところでなければ認められない。

海外に比べ日本は寄付の認定機関が少ないといわれているが、寄付されることにより税金が少なくなるので認定機関を限定しているところだろう。

 

現在地方公共団体に直接寄付が行える「ふるさと納税」がある。ふるさと納税すると2,000円を除いた金額が控除対象となる。こちらはただ税金が少なくなるだけでなく、納税した地域から地元の名産品が送られる。

見方を変えれば2,000円で全国各地の名産品を取り寄せることが出来る。一定の上限はあるが気に入った名産品があるならばお得な制度といえるだろう。

 

寄付金控除制度によって税金が還付されるが、寄付した金額すべてが返ってくるわけではない。自己負担部分があるが、これは自分の幸福に対する対価とすれば安いものとなるかもしれない。

 

長野日報土曜コラム 平成27年7月25日掲載

有限会社テヅカプラニング 手塚英雄

 

 

 

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