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長野日報新聞「土曜コラム」に掲載中のコラムです。ぜひお読み下さい。
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令和元年からのコラム
平成31年
90. 夫婦のコミュニケーション
92. もう一人の自分
93. ニ間続きの座敷
94. 子育ては今が大変
95. 霧に迷いし蛍かな
96. 旅は人生を豊かにする
97. 持家の選択
98. 自動車を手放すとき
99. 投資してますか?
100. お金と人を見つめ続けて
平成26年
94 子育ては今が大変
子育てにはお金がかかる
子供が既に社会人になった親は良く知っていることだと思うが、子供の教育費の捻出には苦労したことだろう。大学4年間でおよそ 1,000 万円のお金が消えてゆく。年間に換算すれば 250 万円であるが、入学年度には受験費用、宿泊・交通費、とりあえずの入学金等が余計に発生する。
1 人暮らしをすればある程度家財をそろえなければならないし、アパートに対して月々の家賃のほかに敷金、礼金が発生する。連絡手段としてスマホは必需品と思えるので、月々の通信費もかかることになる。
子供の将来のためといっても親の生活は厳しさを増す。さらに第 2 子も重なって大学に行けば、これまでの蓄えを取り崩すだけでは足りないことになるかもしれない。
大学進学のためにこれまで貯蓄できれば良いが、高校では受験対策にお金がかかっている。高校生では 1,2 年のうちに部活を行えば、用具以外に大会、練習などで遠征費用が発生している。中学校では高校受験に向けた学習塾に行くこともある。
大学入学までに貯めなければならないと分かっていても、中学、高校でもそれなりにお金がかかることがい。保育園から高校まで公立に行き、大学は私立で 1 人暮らしとすれば、通算で 1,500 万円くらいかかるといわれている。子が 2 人ならば 3,000 万円ということになる。
奨学金や教育ローンがあるといっても借金に代わりがない。少子高齢化が進行するこれからの社会で若年者の負担が益々増える中で借金を負わせるのは、親として心苦しいところである。
教育にはお金がかかるが、お金をかけたからといって親の期待に応えてくれるわけではない。親の苦労を知らずに追加の小遣いを求められ、サークル活動にのめり込むあまり留年でもされたらたまったものではない。
子にまさる宝なし
この諺は子供がどんな宝より優っているという意味である。子供はお金やどのような大切な物よりも、すぐれた宝であるということだ。人の命には、必ず限りがあるから、その命を次の世代へつなぐということから、どんな宝よりも優れているということになる。
全ての動植物は種の保存のルールに従い、子孫を残そうとする。人間もこのルールに従い子を産み育てる習性を持っている。個人の損得勘定などより、深く貴い判断がなされているようである。
医療技術の進歩に伴いかつては無くなっていた命もずいぶん助かるようになったと思われる。平成 22年に行われた厚生労働省の調査によれば、1 歳になるまでに 10 万人中男の子は 246 人、女の子は 210人亡くなるという死亡率がある。
これは男性47歳、女性53歳の死亡率と同等である。中高年者の場合自殺による死亡が相当数含まれてくる。産まれたばかりの子はどれだけ生命力が低いかが分かる。満 1 歳を過ぎると極端に死亡率は低下するが、赤ちゃんに対する親の心配は尽きない。
身体に障害はないか、体重や身長は標準範囲に入っているか、先天的な病気はないか四六時中注意を払う日が続く。やがて保育園や幼稚園に入学するころには身体的な心配は薄れ、新たな心配事が持ち上がってくる。
家庭教育
家庭における主たる教育といえば「しつけ」かもしれない。「三つ子の魂百まで」といわれるように幼いころに記憶したことが生涯続くことから、親としては気をつけなければならない。世の中の善悪を教え、動物や植物に愛情を注ぐように時には厳しくしつけなければならないこともある。
最近ではしつけがエスカレートして虐待に発展し、せっかく誕生した命が奪われることがある。他人との調和に重点を置く日本人の気質からしつけ教育には関心が高い。
泣き癖や人見知りがあればなかなか外出もできない。ある時スーパーで子供が目に付いた商品を勝手に手に取り離さなかったとき、母親はそれを置いてこないと夕飯はないよと脅していた。父親は力ずくで子供から奪い取ろうとすれば、子供はいっそう大声で泣き叫んでいた。
小さい子供が親の言うことを聞かず泣き叫ぶのは、親の感心を自分に向かせようとしている姿の現れだから、しっかり抱きしめてあげること、愛情を持って接することが必要であると専門家は言う。
多くの人がいる場でわが子がしゃがみこんで泣き叫べば親はパニック状態になる。こんなとき冷静に気の利いた言葉など思い浮かばない。分かっていてもその時は力を持ってその場を制することしか出来ないかもしれない。
親の理性と愛情をもって子に対処することはしつけであるが、親が本能的、衝動的な対処は虐待につながる可能性が高い。
やがて子供が大きくなり小学生の高学年から中学生になる頃には反抗期に入る。これまで比較的親の言うことを聞いてきた子であっても、急に親に向かって攻撃的な言葉を発することがある。これは自我の目覚めでありホルモンバランスが崩れた結果であるが、子供が大人になる成長過程のひとつといわれている。
時には親に対して「うざい」という言葉を連発する。中学生になればその後の高校受験を意識し始めるので、親としては勉強に力を入れてもらいたいところだ。
学校から帰ってくるなり自分の部屋に閉じこもり、友達とメールのやり取りや漫画に夢中になる。部屋を出てくるときは食事の時とお気に入りのテレビを見る時くらいである。
放って置いてほしい、話しかけないでほしいと子供は考えているのだろうが、親はつい先回りをしてしまい「もっと勉強しろ」、「さもなければ高校に行けなくなるぞ」と脅迫めいた言葉が口から出てしまう。終いに親に対する暴言に「お前誰に向かって言っているんだ」からここでも力ずくで収めようとしてしまう。
親は仕方なく他人に迷惑をかけなければ良い、警察の世話にならなければ良いと思い、気持ちの整理
をすることもある。
親子関係は変化する
親が子に望むことはどんなことだろう。「自立した社会人になって欲しい」「世の中のために役立つ事をして欲しい」などがある。親から子を見ればいつまでも小さく、弱く、未熟に見えるかもしれない。だから早く一人前になることを望むのだろう。
他に子に望むことに「自分たちの介護、看護をみて欲しい」「墓を守って欲しい」というのもある。これは子が成長し親を超えた頃に望むことかもしれない。
子はいつの間にか身体も心も成長して親と同等になり、やがて親を超えていくのだろう。小さい子供の親であれば、子の成長やそれに伴うお金のことに心配は尽きないだろう。
しかし、子供は年とともに確実に成長し、現在の自分と親の関係にやがてたどり着く。自分自身は既に立派に成長し親に心配をかけることは、かつてとは比べようもないくらい少ないと思われる。
自分が幼い頃親の気を引こうとして泣いたこと、親に向かって言った暴言や親から殴られたことなど忘れているかもしれない。
子育ては結構大変で先が見えないが、自分と子を置き換えてみれば、これまでと違う感覚で捕らえることが出来るかもしれない。
そう考えることだけで今のストレスが少しは軽くならないだろうか。
子の世界に引き込まれないよう気をつけ、親の世界に子を引き込むようにすればどうだろうか。現在の自分と親の関係がやがて子と自分に当てはまる可能性はとても高い。親子は遺伝によりつながり容姿だけでなく性格までも受け継がれているはずだ。
長野日報土曜コラム 平成 26 年 6 月 28 日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
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