プロフィール
プロメトリック
試験会場
営業時間
9:00~17:00
定休日 日曜日
年末年始、お盆、連休
information
メールマガジン
長野日報新聞「土曜コラム」に掲載中のコラムです。ぜひお読み下さい。
平成26年
平成27年
平成28年
平成29年
平成30年
令和元年からのコラム
平成31年
90. 夫婦のコミュニケーション
92. もう一人の自分
93. ニ間続きの座敷
94. 子育ては今が大変
95. 霧に迷いし蛍かな
96. 旅は人生を豊かにする
97. 持家の選択
98. 自動車を手放すとき
99. 投資してますか?
100. お金と人を見つめ続けて
平成26年
97 持家の選択
住宅は高い買い物
人生の 3 大支出には住宅、養育、老後資金があり、それぞれ 3,000 万円で合計では 1 億円といわれている。この 3 大支出の中で自らの意思で決定できるのは住宅取得である。
住宅取得は多くの人が 30 代で取得している。結婚して子供が生まれたこと、その子供が学校に上がることをきっかけに住宅を取得するのだろう。地方では住宅地選択に学校までの距離が大きな要因になっている。
住宅資金を一括で払える人はほとんどいない。だから住宅ローンを組んで長期にわたり返済していく。
もし借り入れがないとすれば、おそらく親からの贈与によって賄われたと思われる。
住宅資金 3,000 万円を借入し金利 2.0%で 35 年返済では毎月 10 万円の返済となり返済総額 4,174万円となる。養育、老後資金は長期間その都度支出され、その合計が各 3,000 万円であるが住宅の場合借入れが発生するので、総額では更に大きな金額になってしまう。
サラリーマンが一生かけて稼ぐお金を生涯賃金という。業種や地域によってその金額は異なるが、この地域では一般に 2 億円といわれている。生涯賃金額が全て自分で使えるわけではなく、社会保険料や税金がまず差し引かれる。残ったお金を生涯可処分所得といい 1 億 5,000 万円くらいになる。この 1 億 5,000 万円の中から住宅資金 4,174 万円が出て行くことになる。その割合は約 28%を占め、今後高齢化が進行すれば社会保険料が増加し、この割合は更に高まることになる。
生涯可処分所得から住宅資金を引いた残り約 1 億 800 万円で養育し、車を取得し、日々の生活をしながら老後に備えることになる。
住宅資金 3,000 万円の中には土地の金額も含まれている。地価が高ければ発生金額は更に高くなる。今後景気が良くなれば給料が増えるかもしれないが、同時に金利も上昇し返済額も増えることになる。
住宅取得は特典が多い
日本の住宅投資は 20 兆円弱でGDP(国内総生産)に占める割合は 3%台でしかない。しかし景気指標の先行指標にも取り上げられ注目されている。住宅取得がなされればその後家具や家電の購入につながりさらに電気、ガス、石油等エネルギーの消費拡大に連鎖する。国策として住宅取得を推進している。
住宅資金の頭金を貯蓄しようと思えば企業の従業員向けに財形貯蓄制度がある。これは元利合計で550 万円までは利息が非課税になる制度である。更に財形貯蓄を行っていると低利で融資を受けられる制度もある。
住宅を借入金で取得すると借入残高に応じて所得税が減額される住宅ローン控除制度がある。減税されるための借入金額や借入期間は景気が落ち込むと拡大される。
住宅の建物と土地を取得すれば不動産取得税がかかるが、住宅に関しては特例で優遇されている。
住宅を建てるための宅地は評価額が半分になり、建物の評価額から 1,200 万円を控除した金額に税率を掛けて税金を計算する。その税率も事務所や店舗の取得に比べ低い税率になっている。
住宅の建物や土地を取得すれば登記が行われる。登記することにより他人に対して自分が所有していることを示すことが出来るが、登記を行うためには登録免許税がかかる。この税金も他の登記に比べて住宅の場合は特例が適用され安くなっている。
建物や土地を取得すれば毎年発生するのが固定資産税である。土地においては一定の面積までは評価額が 1/6 になる特例がある。また建物に関しても一定期間減額する特例がある。住宅が市街化区域であれば都市計画税も発生するが、これも固定資産税同様に特例によって割引される。
一般の贈与は 110 万円を超えた金額が課税の対象になるが、住宅取得資金の親からの贈与の場合は110 万円に加えて平成 26 年は 500 万円までが非課税になる。ちなみに平成 24 年では 1,000 万円までが非課税であった。
税制は国策そのものであるが、国民に対して住宅取得を促している。親からの贈与を受けられる人は限られているので、借金をしながら住宅を取得するよう勧めている。
思いつきは重いつけ
国の政策に加えて個人にも住宅を取得したいという欲求がある。住宅は毎日の生活を行う基盤である。家族が安心して健康的に暮らす拠点でもある。住宅取得によって「安全の欲求」が満たされる。
さらに住宅取得によって親兄弟、地域の住人から一人前の大人と思われるところがある。大きな借金をしたことはそれなりの信用の証である。周囲の人から認められる「承認の欲求」が満たされる。
住宅のことを夢のマイホームということがある。住宅取得は人生における大きな夢の実現である。自分に与えられた課題の克服と捕らえると、住宅取得は「自己実現の欲求」を満たすことになる。
欲求は論理的に目標を掲げ達成を実現したいと思う場合もあるが、多くの場合本能的に湧き上がってくる。住宅取得は思いつきの産物である場合がある。
誰もが取得する住宅だから自分にだって取得できると思うかもしれない。借金をすれば一応取得は出来るが、もし返済できなくなれば金融機関が住宅を売却して残った返済に充てる。返済が終了するまでは住宅の使用は認められていても完全な所有の状態ではない。
3,000 万円の借金をして住宅を取得すると、月々10 万円を 35 年間支払い続けることになる。5 年先が見通せない時代に 35 年はあまりにも長すぎる。皆もやっているからという理由だけでは言い訳にしか過ぎない。
住宅を取得すれば固定資産税が発生する。木造であれば 3 年間は軽減されるが、3 年後には復帰する。建物を災害から守るために火災保険も必要になる。最近では火災保険に加え地震保険も加入率が高まってきた。住宅ローンがあれば万一の際に完済できるよう団体信用生命保険にも加入する。
水道光熱費はこれまでより多くなるだろうし、住宅を取得した地域と新たなコミュニケーションが始まる。
当然のことながら地域自治会に参加し、自治会費も負担することになる。
新築から 20 年も経てば水周り付近から痛みが発生する。給湯ボイラーやエアコンは 10 年も経てば調子が悪くなる。修理しようと思っても修理部品の供給が既に停止されていて、新品を購入しなければならない。
屋根や外壁の劣化、ひいては雨漏り対策など形あるもの時間と共に劣化するので、維持するのに相当の費用が発生する。またバリアフリー化や耐震補強など税制で優遇を図りながら追加の発生費用を促している。
住宅取得の多様化
子供が生まれたから学校に上がるからといって新築マイホーム取得に拘らなければどうなるだろう。アパートは地域や築年数によって家賃が異なるが、2DKならば4万円台3DKならば5万円台で探せるだろう。
初期費用は礼金、敷金、仲介手数料くらいである。維持費は共益費、家財を対象とした火災保険である。自治会費用も発生するかもしれないが、固定資産税や修繕費用は発生しない。
子供の成長や仕事上の転勤があっても対応しやすい。家賃は新築持ち家の半分程度で済むだろう。
見栄や衝動、欲求をほんの少し抑えれば出来ることだ。賃貸住宅であれば災害や事故によるリスクも軽減される。
生涯ずっと賃貸では高齢になって保証人探しに苦労すると思うならば、子供たちが独立してから持ち家を取得する方法もある。子供がいない分部屋数は少なくてすむ。
子供が独立するまでの期間およそ 20 年間、新築住宅と賃貸住宅の費用の差額 5 万円を貯蓄すれば 1,200 万円になる。金利 1%で運用しながら積み立てれば 1,330 万円になる。これを頭金に入れれば
利 2%で計算すれば月々約 10 万円の返済になる。部屋数が少なくなれば新築価格が抑えられるので、返済金額はより少なくなる。
新築に拘らなければ、現在空き家は全国で数多くある。空き家を安く購入してリフォームすれば住宅にかかる費用はさらに抑えられる。
かつて人が住んでいれば庭があり、植木も育っていて物置も付属しているかもしれない。中古住宅では建物の評価は時間と共に減少し、価値のないものとみなされている。建物を解体するにも費用が発生するので、現状のままで売却できれば売主として好ましい。
住宅取得を新築、今すぐ、所有に拘らなければ多くの選択肢が生まれる。住宅取得に係るお金を他に回せば、お金の自由度が高まり豊かに暮らすことが出来る。ただし将来に備える貯蓄を着実に実行することを忘れてはいけない。
長野日報土曜コラム 平成 26 年 9 月 27 日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
有限会社テヅカプラニング 〒396-0013 長野県伊那市下新田3110-4 TEL0265-72-1846 FAX0265-74-7722
Copyright(C) Tezuka Planning Corporation. All Rights Reserved