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長野日報新聞「土曜コラム」に掲載中のコラムです。ぜひお読み下さい。
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令和元年からのコラム
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28. ライフデザイン
29. FPビジネス
30. 新社会人の金融知力
31. 家の取得
32. キャッシュフロー表から始めよう
33. FPワークショップ
34. 本当の保険の見直し
35. FP試験に合格する
37. お金と教育
38. 老後の生活は株価次第
39. 賢く備える老後資金
40. FPとの関わり
平成21年
33 FP ワークショップ
ワークショップ
ワークショップとは体験型の講座であり、企業研修や住民参加によるまちづくりの課題を解決する際に用いられる。座学による一方的な講義と異なり、自らの意見により結果が変化するので、参加者の意識は高まり、身に付くことは多いと思われる。ワークショップ方式はまちづくりや公園作りなど参加者の合意形成には役立つが、利害が対立する課題ではうまく機能しないといわれている。
この方法をライフプラン作成に取り入れるとどうなるだろうか。生涯を通じた家計の収支、貯蓄残高の推移によって大きな過不足が生じた場合には、そこに課題が発生している。その課題を参加者が抽出し、対策案を出していくのである。出された対策案はその場でパソコンに入力され、即座にグラフ上でその結果が確認できる。この作業を何度か繰り返すことにより、生涯赤字にならないライフプランが達成できる。
一人では浮かばない対策案も複数の参加者の意見によって数多く浮かんでくるだろう。いかに収支のバランスを取るのかゲーム感覚で参加し、キャッシュフローの仕組みを学びながらライフプランの達成に向けて知恵を絞るのである。
モデル家族の選択
ライフプランからキャッシュフローを描くには生涯通じて各年にどのくらいの収入があるのか、またどのくらいの支出があるのかによって単年度収支が決まり、前年貯蓄と合算されれば貯蓄残高の推移を見ることが出来る。この貯蓄残高が一時的な赤字であれば借金をしても後々返済は可能になるが、恒常的な赤字では家計の破綻につながる。まとめてしまえばこれだけのことだが、社会の仕組み、家族のイベント、支出金額等が絡んでくるので複雑になる。
ワークショップでは生涯収支に関る仕組みを理解することを目的の一つにしているので、モデル家族を設定して収入、支出、貯蓄残高の推移を見ていく。モデル家族のパターンとしては夫婦正社員で子供の有無、妻がパートの場合、妻が専業主婦の場合、自営業者、生涯独身、シングルマザー等である。子供の数によって支出金額が異なるが、ここでは一定にしている。
このように家族形態を設定し暫定的なライフプランを当てはめる。現在は賃貸住宅に住んでいるが近いうちに1戸建てのマイホームを取得する。子供がいれば2人とも大学まで進学させる。夫婦で2台の車両を保有していて定期的に買い替えをする。保険は生命、損害保険とも加入している。家族4 人で海外旅行に行き、夫の退職後夫婦旅行を計画している。このようなライフプランと収入、支出を組み合わせると貯蓄残高はどのように推移していくかを見ていく。
ワークショップの参加者は事前にどのモデル家族を選択するか決めておく。就労形態、家族構成が近いモデル家族の方が発生する課題、対策案は参加者自身に参考になる。
収支のシミュレーション
妻が専業主婦よりパート勤務の方が、さらに正社員であれば夫の収入が変わらないとしてもリッチな生活が出来るだろう。夫の収入がそれなりに多ければ妻の収入を期待する必要も無い。しかし、仕事は生活費を稼ぐためだけではなく、働きたくても働けない場合もあり、支出の大小に応じて就労形態が決められるわけではない。
また稼いだ収入が全て自由に使えるお金ではない。社会保険料や所得税、住民税等国に払うお金を除いたお金が自由に使えるお金になる。このお金を可処分所得といい、収入に対して自由に使えるお金の割合を可処分所得率とする。サラリーマンの場合社会保険料は収入が増えれば、増えた分保険料は増加するが、所得税は所得に連動するので、経費が多ければ所得は抑えられることになる。所得税率は所得が増えた分に応じて増えるのではなく、所得が多ければより多くの税金が発生する。よって、所得が多くなるに連れて可処分所得率は下がることになる。
一方支出は構成する家族人数により、食費や電気、水道光熱費等の日常生活費は変わってくる。住居費は賃貸か持家か、住宅ローンの金利や返済年数により支出金額は変わる。住居費と同様に大きな支出に挙げられる養育費は高校卒業後地元を離れて学校に行くのか行かないのかによって変わってくる。この際学費がどのくらいかかるかだけでなく、いくらの仕送りをするかが支出額に相当する。車両は地方では1 人一台が必要になり、買い替えや発生する維持費は結構かかる。生命、損害保険料は最近見直しが叫ばれているが、生涯を通じると1千万円を超える金額になるだろう。その他にも通信費や家族のイベントにより支出金額は膨れてくる。
欲しいものを思うがまま購入し支出すればどうなるだろうか。収入が支出を上回っていれば貯蓄残高を増やすことができるが、下回ってくれば貯蓄を取り崩しやがて借金をしなければならない。単年度の収支では赤字になることがあっても、やがて取り戻せるならば心配は無い。取り戻せるかどうかは将来の収入と支出の関係による。
貯蓄残高の推移を見ることにより、いつ頃家計は厳しくなるのか、また余裕が出るのかが分かる。言い換えれば貯蓄残高により生涯家計の現在位置と家計がこれから向かう方向が分かることになる。早急に支出を切り詰めなければならないのか、もう少しイベントを増やしても大丈夫なのかの判断基準になる。
FP ワークショップ
これまでキャッシュフローの仕組み、家計の収支、家族のイベントに応じた貯蓄残高の推移を見てきた。
その結果将来の貯蓄残高は大きな過不足が発生している。ここからが参加者のアイデアによるワークショップが行なわれる。貯蓄残高が赤字になるようでは夫婦の就労形態から収入を増やすにはどうしたらよいか。一方支出を減らすには何からどのくらい節約したらよいかという具体的なアイデアが出される。アイデアは出されると、その場でパソコン上貯蓄残高グラフに反映されることになる。削減金額として十分なのか不十分なのかが即座に分かるのである。
ワークショップでライフプランを取り上げるもう一つの目的として自らの家計と重ねて考えるので、関心が高く真剣になる。また複数の参加者でモデル家族の問題解決に取り組むため、一人では思いつかないアイデアが生まれてくる。さらに進行役としてFP が同席しているので、対策案に対するリスクがアドバイスされる。
ワークショップでは平時だけでなく万一時のライフプランも捉える。保険に加入しなければ保険料もかからず貯蓄残高にはプラスにはたらく。しかし、万一の場合は貯蓄残高があっという間に無くなり、これまでのライフプランは絵に描いた餅になってしまう。ライフプランが決まっていれば平均余命に応じて必要保障額が決まってくる。このように多面的にライフプランを見ることが重要であると気付くことになる。
インターネット上でもライフプランは作成でき、複雑なソフトも販売されている。これらを使えばシミュレーションできるが、自分の思いどおりであれば納得し、意に反すれば使わなくなる。これでは新たな気付きも無く対策立案、まして行動に移れない。
気付きの発見、不安の解消
明るい場所より暗闇にはいれば不安を感じる。今まで見えたものが見えなくなると人は不安を感じるだろう。そこにあるものが危険なものと分かれば、近づかず避けようとするだろう。先が見えないことで不安が増幅される。先が分からないとしたら現状をしっかり見ることだ。最も危険なことは現状を見ようとしないことだ。
モデル家族のライフプランは所詮仮想のもので他人事であるかもしれない。しかし、モデル家族と同様の事象は
自身にも十分発生し得ることである。自分には発生しないだろうと思うか、発生するかもしれないと思うかは自分次第である。
危険な事があるかもしれないと思っていれば、実際に危険に遭遇した際に微かなタイミングで避けられるかもしれない。被害を最小限に留めることができるかもしれない。同様にあのようになりたいという強い願いは叶うこと
が多いといわれている。その思いに共感した他人の力が後押ししてくれる。
現状をしっかり認識すればするほど、思い込みによる不安は消え、夢や希望に対する障害が明らかになってくる。同時に将来なりたい自分や家族が鮮明に見えてくるだろう。
長野日報土曜コラム平成21年5月23日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
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