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38. 老後の生活は株価次第
39. 賢く備える老後資金
40. FPとの関わり
平成21年
39 賢く備える老後資金
自営業者の老後の生活
自営業者の老後の生活はサラリーマンに比べ厳しいものがあるといわれている。老後の生活資金の中心となる老齢基礎年金は、20 歳から60 歳まで1 月も欠かさず40 年間掛け続けたとしても、受給額は65歳から年間80万円程度である。夫婦2人では160 万円で、月額13 万円である。平成19年総務省の家計調査によれば老後の生活費は月額27万円という報告である。養育費や住宅ローンが無いとしても老齢年金だけでは厳しい生活を強いられることになるだろう。
サラリーマンには老齢厚生年金が上乗せされ、さらに退職金や企業年金が受給できる人もいる。サラリーマンは退職とともに日々の収入を得る事が出来なくなるが、自営業者には定年が無いので働ける間は稼ぐことが出来る。自らの健康と就労をもって老後の生活資金を生み出すしかないのだろうか。
資産運用は老後生活のため
個人投資家の資産運用の目的をアンケートでみると、1 位が「老後の生活資金」2 位が「万一に備えて」3 位が「子供の養育資金」となっている。
人生の 3 大資金である住宅、養育、老後のうち住宅に関してはローンの活用が一般的なので、資産運用の目的に入っていないのかもしれない。養育費用は子が大学に行く期間がピークになり、発生時期が明確になっているので貯蓄、運用の計画が立てやすい。ローンの活用も考えられるが、子が卒業時に大きな負債を負うことになる。万一の病気やけがに対しては保険で手当もできるが、病院の支払には立替をしなければならないので、ある程度
の貯蓄は必要になる。
そう考えると老後の生活資金が最も悩ましい。何歳まで生きるのか、どのような暮らしを誰とどこでするのか、限られた収入源では不安が尽きない。取り崩しの生活は余命と残高を常に気にしながら生活していくことになる。
老後資金の自助努力
元気で仕事が続けられれば、老後の心配は無いといえるかもしれないが、歳をとって果たして元気でいられるのか、いつまでも今の仕事が続けられるのかは分からない。自営業者といえども当然老後の生活資金準備は必要になる。
サラリーマンには退職金、企業年金などがあるが、自助努力として年金財形貯蓄がある。現役中に給与天引きで将来の年金を積み立てる制度である。貯蓄型と保険型の2種類があり、貯蓄型は元利合計で550 万円、保険型は払込保険料が385万円まで利子等に対して非課税である。
この非課税制度は積立後の据置期間、退職後の年金受給期間中も適用される。ただし、年金以外の引き出し、2年以上の積立休止などの場合は契約違反となり、貯蓄型は5年遡利息に20%の追徴課税がなされ、保険型は始期に遡り一時所得になる。
財形制度はサラリーマン向けの制度であるが、自営業者には個人型確定拠出年金がある。確定拠出年金といえば企業型が有名で、会社が負担する掛金を従業員が自らファンドを選択して運用を行ない、退職後年金として受給する。運用の結果によって年金額は上下する。
自営業者の場合は個人型確定拠出年金で自助努力することが出来る。企業型と同様にファンドを選択して、運用の結果によって年金額は上下する。掛金は自己負担であるが、掛金は所得控除の対象になる。
国民年金基金に加入していれば、合算して月額6.8 万円が上限になる。サラリーマンと異なるのはこの所得控除のところである。年間81.6 万円が控除対象になれば、所得税と住民税の合算税率を15%とすれば、年間12.2万円節税することが出来ることになる。利回りで計算すれば、15%の運用になり、いまどきこのような長期間にわたる高利回り金融商品はないだろう。
ファンドは数種類用意され、株式、外債が含まれるものもあり、元本割れリスクを伴う。ファンドの中には必ず元本確保型があるので、これを利用すれば元本割れの心配は無い。運用期間中の利子等は非課税であり、受給時は年金で受給すれば公的年金控除が適用され、一時金で受給すれば退職所得になるので退職所得控除が適用され、私的年金に比べ税制面で有利になる。
個人年金では掛金10万円以上で5 万円の所得控除である。受給時は年金額から必要経費が引かれ雑所得として課税される。また、老後資金を株式や投資信託で準備している場合は、譲渡益や配当金に対して10%が課税される。節税からみると所得控除のある制度は有利である。
メリットがあればデメリットもある。加入できる人は自営業者の場合年齢60歳までに限られている。さらに給付が受けられるのは、60 歳以降の老齢給付、死亡・障害時などであるから、病気やけがなどの緊急予備資金には使えない。視点を変えれば、税負担を減らしながら確実に老後生活に備えることが出来る制度である。
他の自助努力制度
自営業者が活用できる制度として他には小規模企業共済がある。この制度は自営業者や小規模企業役員の退職
金を自助努力による積み立てを行なう制度である。加入に当り年齢に関係なく、仕事をしている間加入し続けることが出来る。掛金は月額1 千円から7 万円で、全額所得控除の対象になる。受給は65 歳に達する、事業を止める、死亡等が要件になり、掛金の変更は事業の不振で払込困難と認められた場合には減額も可能である。
国民年金基金も自営業者の老後資金に活用できる。加入できる人は国民年金の第1号被保険者やその配偶者である。加入は口数制で1口目は終身年金に必ず加入しなければならないが、2口目以降は終身年金と確定年金の中から選択できる。掛金は加入時の年齢と選択した年金の種類によって異なる。37歳男性の場合1 口目掛金が約1万円であり、掛金上限は月額6.8万円である。受給は65 歳からの老齢給付と死亡時の一時金である。
小規模企業経営者の老後準備
小規模企業経営者は法人の役員になるので、国民年金の第2号被保険者で個人事業主とは加入できる制度が異なる。小規模企業共済は常時使用する従業員の数が20人以下の、製造業、建設業、運輸業、不動産業、農業などの役員、5人以下の、商業(卸売業・小売業)、サ-ビス業の役員も加入できる。これは個人として加入するので、役員の給与から支払われる。個人としての所得税等の節税には有効であるが、法人の損金になるわけではない。
民間生命保険を利用して老後準備をすることも出来る。かつては役員対象に逓増定期保険、長期傷害保険など節税商品があったが、現在は養老保険、ガン保険を用いては役員、従業員を含め全員を対象とする方法がある。単独役員向けには長期定期保険があるが、これは死亡保障に重点を置き、途中で解約すれば解約返戻金が役員退職金として活用でき、万一の際には会社に死亡保険金が支払われる。
保障期間によるが保険料の1/2が損金、1/2が資産として計上される。長期に渡り利益が出ている法人には節税効果があるだろう。
企業型確定拠出年金の加入者は従業員だけでなく役員も加入できる。
これまで企業年金の適格退職年金や厚生年金基金から移行された企業も多い。掛金の設定は他の企業年金がなければ月額4.6 万円を上限に企業内で設定できる。加入者は60 歳までになるが、掛金を前払い退職金として支払うなど選択制を取り入れているところもある。企業型の掛金は損金になるので、法人税の節税につながる。60 歳以降でなければ受給できないが、役員退職時に一時金として受け取れば退職金となる。
現在従業員数50 名を超える企業が企業型確定拠出年金の導入の中心であるが、小規模企業向けの制度も開発されている。
老後資金より来月の生活費の方が優先課題であると言われればその通りである。売上を伸ばして利益を黒字にする努力は続けなければいけない。しかし、あの時こうしておけば良かったなどと言わないよう、仕事と同様に退職後の老後生活にも今から気を配っておきたい。
長野日報土曜コラム平成21年11月28日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
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