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22 賃貸住宅、建てるリスク建てないリスク

揺れる想い

 

いたるところで賃貸住宅が建設されています。すでに飽和状態といわれているにも関わらず、新たな賃貸住宅の着工が続いています。きっと素人の地主がプロの不動産会社や建設会社に上手にそそのかされ建てたに違いないと思われています。しかし、建築後しばらくするといつの間にか入居者が決まり、駐車場には車が止まり、洗濯物が干されています。どこからそんな入居者がやってくるのか疑問に感じながら、そのうち現在の入居者が出て行けば空室になってしまうだろう。賃貸住宅を建てるにはそれなりに大きな借金をしなければならないので、いまさら大きな借金なんてしたくはない。

 

建てない理由を自分なりに正当化して言い聞かせているようにもみえます。他にも土地は持っているが建てない人がそのように言うのだから、自分の考えは間違ってはいない。実は賃貸住宅には関心があるが、いざ建てるには決断する勇気もいるし、建てるとなると面倒なことがたくさんあるので自ら関心を持たないようにしているところではないでしょうか。

 

賃貸住宅を建てて20,30年経過して良かったと思っている方もいるでしょうし、止めておけば良かったと思っている方もいるでしょう。建築側の良し悪しもありますが、自身にも良し悪しに影響する要因があります。賃貸住宅を建てるリスクとすでに建てられた方が持っていた建てない場合のリスクを取り上げてみました。

 

建てるリスク

 

賃貸住宅を建てるとなると自己資金で全額賄う方は少ないでしょう。不動産会社によると最近建てられた方は平均8,000万円の借金をしているようです。このような大きな借金は長きに渡る返済となり大きなリスクの1つに挙げられます。

 

続いてすでにいたるところで賃貸住宅が建てられているので、入居者確保が出来るかという心配です。

仮に新築のうちは入居者が見つかっても、時の経過とともに古くなり近くで新しい賃貸住宅が建築されれば空室のリスクが発生します。空室は家賃収入が少なくなり借金返済に直接影響しますので、大変気になるところです。空室率は建物仕様によりますが、当初の10年くらいは0~10%といわれ、その後年数が経つにつれ高まっていきます。建物が古くなってくると家賃を値下げすることになるでしょう。家賃が下がれば下がるほど入居者が多様化します。よって家賃滞納、入居者間トラブルさらには事故や事件に発展するリスクが高まります。

 

国内では大きな地震が頻発していますが、もし大地震が起きたら建物は壊れ、入居者が不在になれば借金だけが残ります。火災事故も同様な事態になるでしょう。地震に対して保険では一定額までしか補償していませんので、再建の際全てが賄えるわけではありません。このような災害は万一の事故といえますが、築年数が経過すれば、設備器具の交換、外壁塗装等修理費が発生します。支出が多くなれば手取りは少なくなり、返済計画にも影響を及ぼします。

 

建築当初は順調にいっていたが、途中からうまく行かないリスクがあります。企業の要望に応えて賃貸住宅を建てると丸ごと借りてもらえます。企業が順調なうちは良いが、リストラなどが行なわれれば、大量の空室が発生します。建物仕様に企業の要望が入ったりしていると、他の入居者には不適当な場合があります。このような場合新しい入居者確保はますます難しくなります。

 

建設会社に勧められるがままに賃貸住宅を建てたところ、郊外で利便性が悪いことから新築時から入居者が確保できず、返済が苦しくなる場合があります。保有土地の活用を優先して入居者ニーズ、立地条件等市場調査が不十分であったことが失敗を招きます。

 

アパート業者の家賃保証制度に安心して賃貸住宅を建てたところ、更新のたびに家賃の値下げが要求され、それでも空室があれば大修繕を要求されることがあります。事前に描いた計画より収入は少なく、支出が多くなれば大きな借金だけが残ることになります。このように賃貸住宅を建てることは多くのリスクに関わることになります。

 

建てないリスク

 

賃貸住宅を建てればそれなりにリスクが発生しますが、すでに賃貸住宅を建てることでリスクを解消された方もいます。建てられた方から建てない場合のリスクを抽出してみると3 つのリスクが挙げられました。

 

はじめに「老後の現金収入が少ない」というリスクが挙げられます。60歳過ぎに年金生活では不安であるということでしょう。子供たちは独立して生活をしているので、子供の世話にはなりたくないし、頼りに出来ない。しかし、人生90年といわれるようにこれからの老後時間はたっぷりあるので、旅行や趣味などを楽しみたいという思いです。

 

老後生活のシミュレーションをしますと、入ってくるお金としてサラリーマンの場合は厚生労働省の試算として夫サラリーマン、妻専業主婦では月額23万円相当です。一方夫婦ともに自営業者であれば満額の老齢基礎年金としても13万円相当です。サラリーマンの場合は60代前半から支給されますが、国民年金では支給は65歳からになります。

 

老後資金として退職金がありますが、全国平均大卒の場合約2,500万円、高卒管理職では約2,000万円となります。中小企業になりますと平成16年東京都の値ですが、大卒1,200万円高卒1,000万円といわれています。

 

仮に夫サラリーマン妻専業主婦が老齢厚生年金を受け取り、退職金2,500万円を老後生活に全額充てるとして、夫婦2人の生活費を月額30万円とすれば、夫75歳時点で貯蓄残高が0になってしまいます。

 

さらに今後の物価上昇や社会保障給付の削減が行なわれれば、資金枯渇年齢は早まることになります。最近では65歳定年を導入する企業もありますが、現役と同様の収入を得ることは出来ません。

 

次に建てないリスクとして挙げられるのは、「相続対策」となります。相続税の算出は保有資産を一定の基準を設けて評

価します。現金、預貯金等は額面金額を基準としますが、株式は上場株式か取引相場ない株式で分けられます。上場株

式では相続の日の終値、その月の終値の平均額、もしくはその月の前月、前々月の終値の平均額のうち最も低い価額になります。建物は固定資産税評価額となり、宅地は路線価もしくは倍率方式によって評価します。これらを合計しますが、負債があればマイナスすることになります。

 

評価合計額が基礎控除額(5,000万円+法定相続人数×1,000万円)以下ならば相続税は発生しませんが、基礎控除額を超えると相続税が発生します。賃貸住宅を建てるための借金が負債として計上されます。賃貸住宅は増加資産となりますが、建物の評価額は固定資産税評価額ですから、建築費の7割相当額に減額されます。さらに賃貸住宅では貸家ですから評価額は建築費の半分相当になり、土地は貸家建付地となり更地の85%くらいになります。賃貸住宅を建てることで財産評価額を圧縮して相続税負担を軽減することになります。

 

3 つ目の建てないリスクとして、「これまで行なってきた事業の見直しが迫られている」場合があります。

既存事業後継者の不在、既存事業の廃業等から土地の活用が必要となってきます。賃貸住宅事業はこれまでの事業に比べ手間がかからない分利益率は落ちてくるでしょう。建物の構造、規模によりますが、実質利回りとして2%程度になるでしょう。賃貸住宅の実質利回りは金融商品の税引き後配当利回りに該当しますので、定期預金、債券利回りを上回ります。

 

土地活用という観点では「貸す」「売る」「建てて貸す」という選択肢がありますが、賃貸住宅は「建てて貸す」に該当しますが、「建てて貸す」のは賃貸住宅に限らず、オフィスビルや店舗も考えられます。しかしこのような施設は利便性が高く、立地条件が限定されます。その点賃貸住宅は比較的緩い条件の下で事業が可能といえます。

 

新たなリスク

 

代々継続してきた土地を手放すことは自分の代では行ないたくないと言われます。また土地の売却となると大きなお金を手にすることになります。これまで手にしたことの無い大きなお金を持つと人は人生を変えてしまうことがあります。「宝くじ当選者は5年以内に破産する」と言われていますが、子が相続で得た土地を売却したら同様なことが起こるかもしれません。

 

突然降って湧いたようなお金には愛着は薄くなります。そんなお金によって仕事を忘れ浪費、遊行、ギャンブルと遣い、一発逆転を狙い借金すれば破産するのは当たり前です。大きなお金は両刃の剣として人の人生を救うこともあれば、壊すこともあります。

 

リスク対策として賃貸住宅を建てたとしたら、相続財産は圧縮できますが、建物として長期に渡り資産が固定化されます。自身の代だけでは返済が終わらなければ、次代に受け継がれますので、相続人の選定が必要になります。また相続人が複数であれば、遺留分に注意を払いながら分割財産を決定することになるでしょう。これを無視すると後々相続人間の長い争いになるかもしれません。

 

賃貸住宅を建てた後の大きなリスクとして空室がありますが、これは立地、構造、仕様など設計段階で多くが決まってしまいます。安く建てるより入居者が住み続けたくなるような建物が求められます。賃貸住宅規模が大きくなれば多様な人が入居します。入居者間トラブルが事故や事件に発展することもありますので、入居者管理は不動産会社に全て任せるのではなく、自らなるべく関わり入居者と人間関係を築くことがリスクを低減することになります。

 

リスクとは将来発生するかもしれない損失ですから、もしかしたら発生しないかもしれないし、かなりの確率で発生するかもしれません。人は歳を取り、いつかは亡くなりますので、このリスクは必ず現実のものとなります。リスクが現実の損失になろうとした時、人はあわててパニックに陥るでしょう。パニック状態では平静な思考は止まり、2次損失を招きます。早期のリスク処理は選択肢が豊富ですが、最も恐ろしいのは目の前のリスクをリスクと認識しないことでしょう。

 

長野日報土曜コラム平成20年6月28日掲載

有限会社テヅカプラニング 手塚英雄

 

 

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