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長野日報新聞「土曜コラム」に掲載中のコラムです。ぜひお読み下さい。
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令和元年からのコラム
平成31年
53. 遺品整理
54. 死んだ後にやること
55. 地震リスクマネジメント
56. お墓
57. ラストメッセージ
58. 献体・臓器提供
59. 介護に備える
60. 葬儀業者
61. 結婚活動
62. 結婚しようよ
63. 結婚する前に
64. 夫婦の財布
平成23年
57 ラストメッセージ
生命保険
日頃から几帳面な人ほど自分が死んだ後のことが心配になるだろう。建物や土地、金融資産の配分、親族、友人、知人との付き合い、墓や家の維持管理、何より家族の行く末が心配である。これまで自分が中心となって切り盛りしてきたゆえんである。
子供たちにまだまだ伝えておかなければならないことが、山ほどあるのに伝えられない、教えられないことは親としての責任が果たせないことになる。
家族が自分に経済的に負うところがあれば、残された家族はどうやって生活していくのだろうか。また葬式にもお金がかかるだろうから、資金準備とともになるべく負担は少なくしたいと思うだろう。
そんな経済的心配を解消するのに生命保険がある。被保険者の死亡をもとに保険金が支払われる。保険では受取人を指定することが出来る。保険金で遺族の生活費用や葬式費用が賄われると考えられる。
実は契約時にはそんな思いがあっても、実際に保険金が支払われるのは、契約してから何十年も経ってからの場合がほとんどである。家族の状況や家族に対する思いも変わってくるかもしれない。
実際に支払われた保険金はお金でしかなく、使途が限定されているわけではない。受け取った人が自由に使うことが出来る。場合によっては被保険者である親の思いとはかけ離れた使われ方がされることもある。
金額の多寡にもよるが思いがけない大金は、その後の人生を狂わすこともある。そんなことまで考えていると、心配は尽きない。
エンディングノート
生命保険は直接経済的支援の役割を果たすが、故人の思いは直接伝わりづらい。故人の思いであるメッセージとともに終末期の希望をまとめたものにエンディングノートがある。
これはお墓、葬儀、宗派のこと、自分に万一のときの対処や伝えて欲しい人、財産の処分方法等を記入することが出来る。
万一の出来事は突然やってくるので、家族は通夜、葬儀、告別式等の準備をどのようにしたら良いかあわててしまう。本人の助言を求めたいところに、エンディングノートがあれば迷いは少なくなる。
遺産分割においても本人の希望が表されていれば、分割方法に多少不満があっても大きな争いに発展することはないだろう。
一方細かく指示したために、遺族が迷惑する場合もある。祭壇の飾りつけの生花が指定されても、季節によっては準備できない場合がある。また形見分けで大きな家具をもらっても、保管場所がなく捨てるに捨てられない。
エンディングノートには自分の思い出やこれまで就いてきた職業、両親、兄弟、配偶者、子供等親族との関係を記入できるものがある。これまでの人生を振り返るとき自分と関わった大切な事柄ばかりである。
これらを発展させ自分史を作成することが出来る。
エンディングノートの作成時は死際で作成するものではないので、これからの自分の姿も描いている。
これからやってみたいこととして、旅行、ボランティア、習い事、趣味等を記入する。死生観を持ってこれからの人生を考えることは、残りの人生をより有意義に過ごすことが出来るだろう。
遺言書
エンディングノートには法的拘束力が無いので、本人の意思に基づいて必ず実行されるわけではない。確実に実行するには遺言を作成しておく必要がある。
子のない家で配偶者に全ての財産を相続させたい場合は遺言書に表しておかなければ、すでに親がいない場合相続財産の1/4は兄弟姉妹が相続することになる。
事業を営む家では、遺産が子供たちに均等に分割されてしまえば、事業後継者はスムーズに事業を承継できなくなるかもしれないので、事業にかかわる資産は後継者に相続させるよう遺言に表しておく。
遺言書には、全文自筆で作成する自筆証書遺言と公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言がある。費用がかかるが、遺産を確実に分割していきたい場合には公正証書遺言が適している。
自筆証書遺言は手軽に作成でき、お金がかからない一方、偽造、変造の恐れや遺言実行には家庭裁判所の検認に時間がかかる。公正証書遺言では検認は不要なので遺産分割が速やかに実行できる。
エンディングノートにはこれまで人生の思い出や感謝の気持ち、病気になったときや葬儀の方法など細かく指示することができるが、遺言に表すことができる内容は限定されている。非嫡出子の認知、相続人の廃除とその取消、相続分の指定、遺贈等遺産に関する内容である。
安心するのは自分自身
生命保険、エンディングノート、遺言書は亡くなった人からのラスとメッセージである。自分が死んで残された家族が困らないように、争いを起こさないようにと願いメッセージを送った。
このようなメッセージがあれば、亡くなった親の意思だからといって配偶者や子供の責任が免れる。また、親しか知りえないことであれば、それを開示してくれるのはありがたいことである。
実はラストメッセージを残すことは、遺族以上に自分自身のためかもしれない。保険金が振り込まれ、残高を確認した妻は、養育を含めた生活設計がこれで実現できると安心した姿を思い浮かべることが出来る。
エンディングノートに日常自分がやっていたことを家族に受け継いで分担してもらえれば、自分が死んでいなくなっても何一つ変わることなく処理されると思える。
遺言で遺産のほとんどを後継者である長男に相続させれば、長男は自分に代わって家族の面倒をみてくれるだろうと安心する。
ラストメッセージは自分が死んでも遺族が困らないように準備すると同時に、自分自身の安心を得る手段になりうる。
伝えたい相手
人の死はいつやってくるか誰にも分からない。事故や事件で突然命を落とすことがあるかもしれない。
平均寿命では男性80 歳女性85 歳であるが、誰でもこの歳まで生きられるわけではない。突然の死であればラストメッセージを残す準備が出来ないこともある。
現在生命保険の加入率は全国平均で8 割くらいである。ところがエンディングノートを作成している人の割合は少ないだろう。遺言を作成している人は更に少なくなるだろう。
エンディングノートや遺言の作成は、高齢になって平均寿命が近づいてきたら始めればよいと考えるかもしれない。しかし、突然死もあれば、平均寿命をはるかに超える場合もある。
それならばラストメッセージを書き始めるのはいつでも良いことになる。書き始めた頃は妻が元気で、自分の介護は妻に看てもらおうと思っていたが、妻に先立たれれば叶わないことになる。またやがて長男に家を継いでもらおうと思っていたが、長男は県外で就職し、住居を構えてしまえば叶わない思いとなる。
このように時とともに周辺環境が変化すれば、伝えたい内容や相手が変わってくる。ゆえにラストメッセージは環境変化とともに改定してゆく必要がある。
伝える内容や相手が変わろうとも、まずは書き始めなければ整理が出来ない。自分の本心を表すことは容易ではなく、書いたり消したり繰り返して初めて本心に近づくと思われる。
長野日報土曜コラム平成23年5月28日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
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