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64 夫婦の財布

共働き夫婦の増加

 

かつて独身女性の習い事といえば、お茶、お花、料理があげられた。嫁ぎ先で恥ずかしくないように礼儀作法を身につけ、家の中をきれいな花で飾り、夫や家族の健康に気を配った美味しい料理作りが主婦に求められていたのだろう。

 

これは結婚したら専業主婦になることを前提にしているが、今どき結婚しても働き続けることは当たり前に思われている。近年、少子高齢化に伴い、夫婦共働き世帯は減少しているが、夫がサラリーマンの世帯では共働きの割合は50%を越え増加しているといわれる。

 

働く女性は子がいない世代と教育費負担が重い世代が特に多い。そして共働き世帯は片働き世帯に比べ支出、貯蓄率ともに高い傾向があるという。

 

男女雇用機会均等法の改正により女性が働きやすくなったこと、少子化による労働力不足から女性労働力に期待が高まっていることなどがあげられる。また夫ひとりの収入より夫婦で働く方が当然増収することになる。

 

夫婦の財布

 

これまで別々の財布で生活してきたもの同士が結婚式を挙げ、新居で生活を始めるには共通した支出が発生する。しかも少額でなく、これまで支出したことのないような大金が必要になる。

 

このようなイベントに大金を使うのはもったいないと思うかもしれない。しかし、披露宴でのケーキ入刀が新婚夫婦の初めての作業ならば、結婚式等にかかる費用をどのように工面するかは、生活上初めての共同作業として重要である。

 

どちらがどのくらい負担するのか、招待した人数に応じて負担するか、親に支援を求めるか、夫々の貯蓄と今後の生活費などを話し合って決めなければならない。夢や希望を実現するために、夫婦として知恵を絞ることになる。

 

結婚して間もない夫婦が互いに働いていれば、住居費や生活費を協同して負担しあい、その他は本人任せにしているところがある。貯蓄を協同して行なっていればよいが、夫々自由にすれば趣味、娯楽、旅行、おしゃれ、お付き合いなどにお金は費やされてしまうだろう。

 

愛するパートナーと自由にお金を使って過ごせれば楽しいだろうが、夫婦の財布をキチンと管理しなければ、愛も長続きしないかもしれない。

 

婚後の夫婦の就労形態

 

結婚すると男性は周囲からの信用と責任感の高まりから、より充実したビジネスライフを送ることになるだろう。部下や後輩も増え、これまでの仕事に加え管理業務を任されることになるかもしれない。勤続年数とともに業務範囲が広がり忙しくなり、より会社人間になるだろうが、就労形態に大きな変化はない。

 

一方女性の場合は、結婚を機に会社を辞めないにしても夫の勤務形態に多少影響を受けるかもしれない。さらに将来出産の際には多くの女性が休職・離職し、育児に専念している。親と同居している家庭は育児に親の協力も得られるかもしれないが、核家族では女性が中心となって育児をしている。

 

子供が小さいうちはこれまでと同じようにフルタイムで仕事をすることは難しい。子供の数にもよるが、育児・養育のため10年以上の期間に渡り、就労形態に制限されることになる。

 

その間男性の収入だけで生活することになる。子供が大きくなるにつれて習い事やサークル活動が始まれば、家計はますます厳しくなるだろう。

 

育児・養育がひと段落して時間的に働けるようになっても、これまでと同じような仕事に就ける女性は限られている。若者が就職できないような現在では、既婚女性の就職先はかなり限定されるかもしれない。このように男性に比べ女性の就労形態は出産・育児によって大きな変化を余儀なくされる。

 

男性が育児・養育に専念する選択肢もあるが、一般的に男性のほうが女性に比べ経済力がある。また、出産できるのは女性に限られているので、出産に引き続き育児は女性が中心になっている。

 

ライフプランの構築

 

独身時代の財布をそのままにして、夫婦で共同生活を継続すれば、出産により女性は収入がなくなり夫婦の財布にお金を入れることが出来なくなる。自分の美容院、化粧品、エステ代などにこれまでの貯蓄を切り崩すようになれば、趣味や余暇に回るお金は無くなる。

 

夫の理解と協力があればよいが、夫は相変わらず自分の財布の確保に拘れば、夫婦のすれ違いが始まる。夫が育児や家計に関心を持たず、これまで通りのペースであれば、やがて妻は耐え切れず修復不能になるかもしれない。

 

結婚して夫婦になれば、これまでの独身時代とは異なる共同生活が始まることは何となく分かっている。

分かっているならばもう少しイメージを膨らませ、将来子が産まれ家族がどうなるのか考えてみよう。

 

子供はいつ頃何人くらい欲しいか、マイホームはマンションか一戸建てか、マイカーはいつ頃いくらくらいで買い換えるか、今度の旅行はどこへ行くかなど二人で想像すればどんなに楽しいだろうか。

 

次にそんな夢や希望をかなえるにはお金はいくら必要なのだろうか。いつまでにいくら貯蓄しなければならないか目安が付く。あまり世間の平均値にとらわれることなく、現状の家計の姿からイメージするのが良い。

 

夢や希望が大きすぎて現状から見れば到底不可能と感じるかもしれない。実は夫婦の共同作業はここから始まる。まず各イベントに優先順位を決める、そして殖やす工夫、守る工夫、減らさない工夫など家庭毎オリジナルの工夫をして夢や希望をかなえる。

 

夫婦で互いの考えを話したり聞いたりすることで、互いをより深く知ることになる。さらに話し合ったライフプランを表にしておくのがよい。夫婦のベクトルを合わせるためにライフプランは有効に働く。作成したライフプランは1年に1度見直して、新たな工夫を加えてゆく。

 

夫婦の財布は一元管理

 

自分の財布に仮に10万円が入っていれば、1万円使ったとしてもまだ9万円残っている。そう思っていると10 万円なんてあっという間に消えてしまう。自由に使えるならば、将来のために貯めておこうと思うより使うほうが楽しいに決まっている。

 

論理より衝動が常に勝るものだ。売り手は買い手の衝動を煽るような手段で巧妙に近づいてくる。無防備でいればいつまで経ってもお金は貯まらない。

 

決してお金を貯めるのが目的ではない。夫婦で描いたライフプランを実現するためにお金を貯めるのである。人生にはお金の貯め時と使い時があり、毎月入ってくるお金の範囲だけでは賄いきれない。

 

夫婦が共稼ぎをして夫々の財布を持って管理していれば、将来の目的が達成は難しいか、どちらからか不満が生じてくる。そこで夫婦の財布は妻が一元管理するのが良いと思われる。

 

女性より男性のほうが一般的に稼ぐ力が大きい。一方女性には守る力が潜在的に備わっていると思われる。また、夢や希望を語るのは男性が得意で、コツコツと決めたことを実行するのは女性の方が勝っているようである。

 

衝動を抑え夫婦で決めたことを実行するのは、決して容易くないはずであるが、結婚式で誓った言葉をもう一度思い出して欲しい。「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」「はい、誓います」

 

長野日報土曜コラム平成23年12月24日掲載

有限会社テヅカプラニング 手塚英雄

 

 

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