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63 結婚する前に

婚姻数が増えてきた

 

今年平成23年3月に発生した東日本大震災を機に婚姻数の増加が伝えられている。これまで経験したことのない震災により一人で居ることの恐怖から、誰かと一緒にいたい、また家族と一緒にいたいという思いの現れだろう。婚姻数の増加は婚約指輪の販売、結婚式場への申し込みや婚活サイトへ加入者の増加にも現れている。

 

これまでの一人暮らしの気楽さや、理想とする相手にめぐり合えない、不安定な就労による結婚後の生活不安によるためらいを超える勢いが、今回の震災によってもたらされたことになる。

 

そして結婚し子供が生まれれば、新たな需要も生まれる。少子高齢化が進行する今日にとっては次世代の担い手として期待されるので、喜ばしいことである。

 

やがて復興が進み、いつか震災の恐怖は薄れていくかもしれないが、婚姻関係はいつまでも続くことになる。結婚には何らかの衝動が必ず必要になるが、夫婦の関係を維持していくには、一時の衝動だけでは長続きしない。

 

婚姻関係を維持するにはお金は必要であり、また相当の心構えが必要となる。

 

結婚の費用

 

人生において多くの客を一堂に招くことが出来るのは、結婚式と葬式くらいである。葬式はその場に本人がすでにいないので、招待客の様子を伺えるのは結婚式だけになる。

 

そんな人生の一大イベントには相当のお金がかかる。ちょっと前はジミ婚といわれ結婚式にお金をかけないのが流行っていたが、最近では結婚式にお金をかけるようになってきたといわれる。

 

結婚式の方法によっては、かかるお金にずいぶん差があるだろうが、一般的に結婚式までにかかるお金を調べてみた。

 

結納までにかかる費用が90万円、挙式、披露宴、披露パーティー費用が290万円、ご祝儀が200万円、新生活準備費用として160万円となっているので、自己負担額は340万円になる。若い2人であれば全てを準備するのは難しいので、親から相当の援助をしてもらうことになる。親からの支援金額は平均値で200万円程度であ

る。

 

結婚にかかる費用は地域により異なり、東海地域は高額になるといわれている。学生時代の友人がかつて愛知県で行なわれた結婚式に出席した時、引出物に鮭が丸ごと一匹あり、大きな箱を抱えながら帰りの新幹線に乗り込んだときは恥ずかしかったといっていた。そしてその鮭は寮母さんに渡され、寮生の食事に振舞われたという。

 

若い2 人は多くのお金がかかる挙式や披露宴を少しでも省いて、新婚旅行にお金をかけたいと思うかもしれない。しかし、特に新婦の親にすれば大切に育てた娘を嫁に出すことに大きな抵抗を覚える。いつか来ることなので仕方がないと想いながらも、両家の顔合わせ、結納、挙式、披露宴等のセレモニーを通じて気持ちの整理をするのである。

 

 

賢者の教え

 

世の賢者の結婚に対する名言を拾い出してみた。

「結婚生活で一番大切なものは忍耐である」(チェーホフ)

「愛は結婚の夜明けであり、結婚は愛の日没である」(フィード)

「結婚する前、男はあなたの言った言葉を夜中にあれこれと考えて一晩眠れずに過ごすが、結婚した

後は、あなたの話がまだ終わらないうちに眠ってしまうものなんです」(ヘレン・ローランド)

「結婚は鳥カゴのようなものだ。カゴの外の鳥は餌箱をついばみたくて中へ入りたがり、カゴの中の鳥は

空を飛びたくて外へ出たがる」(ミシェル・ド・モンテーニュ)

「結婚をしばしば宝くじにたとえるが、それは誤りだ。宝くじなら当たることもあるのだから」(バーナード・

ショウ)

 

結婚に対して賞賛する言葉は少なく、後悔や反省の言葉ばかりが目立つ。本気で言っているのか、シャレているのか分からないが、共感する名言はいくつもある。

 

歴史に名を残すほどの人は、自らの使命と思える仕事に取り組んでいたのだろう。結婚はそんな仕事の妨げになったのだろうか。

 

賢人であれば、パートナーとの関係をいか様にも作り上げられたと思うが、後悔の言葉の多さから見ると、それも難しいことだったのかもしれない。

 

「愛する者と一緒に暮らすには一つの秘訣がいる。すなわち、相手を変えようとしないことだ」(シャルドンヌ)

しかし、名言は結婚を経験したから生まれたとすれば、結婚も全部否定されるものではないだろう。

 

誓いの言葉

 

教会で結婚式における神父からの宣誓の問いかけがある。

「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを

愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」若い新郎新婦はためらうことなく、「はい、誓います」という。多くの人が列席している場で、条件付で誓いますとはいえないし、言わざるを得ない。

 

若い2人には誓いの言葉はイベントの一つでしかなく、言葉の意味をどこまで理解しているか疑問である。当時神前で行なったので、多少違っていたと思われるが、同様の誓いを立てたのだろうが、ほとんど記憶にない。

 

今誓いの言葉の問いかけに全くのためらいなく「誓います」といったら、ほとんどがうそになる。出来もしないはったりを口にした事になるだろう。努力目標にしてもずいぶん重いように感じる。結婚は神の前、神仏の前、多くの人の前で誓いを立て、実践されるよう促されている。

 

見方を変えれば、それほどまでに拘束しなければ、緩んでしまう約束と受け止めることも出来る。そうすると世の賢人の名言は素直に心の内を述べたように思える。

 

契約といえばそれが守られなければ債務不履行で、損害賠償が発生する。実際に離婚事由により慰謝料等が発生している。誓いの言葉を結婚スローガンにして、達成できなくてもペナルティがないものとすれば、気が楽になる。

 

多くの不満があってもひとつでも満足するところがあれば、それで良しとするくらいの心のゆとりが必要かもしれない。互いの欠点には目をつぶり、良いところだけを見つけ出すようにすれば、幸せな結婚生活が送れるだろう。

 

やはり結婚生活を継続するには努力と忍耐が求められるようだ。この努力と忍耐が人を大人にしてくれるのかもしれない。

 

長野日報土曜コラム平成23年11月26日掲載

有限会社テヅカプラニング 手塚英雄

 

 

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