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長野日報新聞「土曜コラム」に掲載中のコラムです。ぜひお読み下さい。
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令和元年からのコラム
平成31年
41. 個別相談
42. 住宅と教育そして老後
43. 不安を課題に
44. 金融スキルで免疫力向上
47. 経営者の老後資金
48. 男と女の金銭感覚
49. エンディングノート
50. 退職者の生活設計
51. 死ぬ前にやっておきたいこと
52. お葬式
平成22年
50 退職者の生活設計
退職後はのんびりゆったり
現役のサラリーマンは月曜日から金曜日まで会社に行って働くことは当たり前である。満員電車に揺られながら、自動車では通勤渋滞に合いながら職場に向かう。休日出勤をした時はいつもと違う通勤状況に慌しさを一瞬忘れるときがあるが、職場に入ると本来休日なのにどうして仕事をしなければならないのか不満を覚えることがある。
一方平日仕事を休むことがあると、何か得をした気分と共に、罪悪感を覚えることがある。最近では平日家で過ごしていれば、リストラされたと近所の人に思われるので、終日家の中で過ごすか、それとも外へ出かけてしまう。
40 年あまりこのような生活が続くと定年退職が待ち遠しくなる。永年家事育児を全て任せてきた妻と温泉や旅行に行ってみたい。新婚旅行で行ったあの場所は、今はどのように変わっているのだろう。世界遺産や国内の遺跡めぐりをしてみたい。
また若いときに憧れたオートバイに乗ってみたいし、ギターを弾いて、ピアノにも挑戦してみたい。運動不足の解消にゴルフを始めてみると、プレー当日はいつもより早く目が覚めてしまう。現役時代は趣味に没頭すれば仕事に対する熱意が不足していると思われたが今はその心配はない。
ところが実際に退職を迎えると有り余る時間を使いこなせず、空しさがこみ上げてくる。旅行に行くにしても毎月行けるわけではないし、趣味やスポーツをしてもメンバーはかつての同僚である。話題は常に同じで新鮮さが感じられない。
現役時代の就労時間はおよそ10万時間あるといわれる。一方退職後の自由時間もおよそ10万時間ある。現役時代は会社から目標が与えられ、結果が求められた。結果を出すことが会社のためであり自身の生き甲斐につながっていた。
退職後の自由時間では誰からも何も求められない、期待されない。新たな生き甲斐を見つけられないまま過ごすとしたら、長く淋しい余生となる。
現役時代は会社が全てをやってくれる最近のサラリーマンには終身雇用や年功序列は過去の制度といわれるが、多くのサラリーマンにはまだあてはまる制度である。成果主義が取り入れられ給与や賞与に差が生じても、勤続年数に応じて収入は増えてゆく。
退職金や企業年金はそれなりに準備されている。市場金利に比べ低利の住宅融資制度も備えられている。財形制度があれば利息に課税されることなく積立貯蓄もできる。病気やケガ等で会社を休めば有給休暇と共に互助会から見舞金等が支給される。家族に不幸や出産があれば社会保険上の手続きは会社が行なってくれる。
さらにサラリーマンゆえに確定申告はほとんど関係ない。申告するのは住宅を建てたときと医療費が高額になったときくらいだ。年末調整はその仕組み知らなくても同僚のものを真似て作成すれば何とかなる。
サラリーマンは会社の総務や労務が自分の秘書のように全てをやってくれる。
やがて会社の総務や労務が全て自分のためにやってくれるのが当たり前のように思ってしまう。これは本人に敬意を払っているわけではなく、企業として効率を高めるために不慣れな従業員の代行をしているに過ぎない。
40 年に渡る長期間目の前の業務に集中し続ければ、社会の仕組みに接する機会は失われる。言われたとおりに行うだけでは、それが自分にとって必要か不要か、損か得かを考えることが出来なくなってしまう。長いサラリーマン生活は変化する社会に順応する術やリスクセンスを養う機会を失することにつながりかねない。
退職後は全て自分でやる
退職後の医療保険は健康保険の任意継続に加入するか、無職となり国民健康保険に加入するか、家族の被扶養者になるか選択しなければならない。選択できる制度により、保険料の大小が発生する。やがて75 歳になれば長寿医療保険に変更される。
今年60 歳で退職すれば厚生年金から報酬比例部分が受給できる。雇用保険の基本手当を受給すれば年金は受給停止となる。65 歳から受給できる老齢基礎年金を前倒しで繰上げ受給すれば、その時の年金額は増えるが、障害や遺族年金は受給制限がかかる。
同居の親がいたり、やがて自身が高齢になれば介護の不安がある。
65 歳未満であれば介護保険の給付に制限があり、事故等で要介護状態になっても給付は受けられない。判断能力が衰えていった場合は自身の代わりに誰かに代行を依頼しなければならない。
公的な社会保険制度に合わせて自助努力となる民間保険の保障内容も見直しが必要となる。子供が独立していれば養育費負担はないものの、配偶者の生活資金や遺産分割における過不足の調整に死亡保険金は役立つ。医療保障に
おいては終身保障が安心であるが、すでに病気をしていれば加入制限を受けるので、保険で賄うか貯蓄で賄うか迷うところである。
退職と共に退職金が支払われているだろう。まとまったお金になるので、銀行に預けるだけでなく資産運用を図ろうと考える。金融商品販売員の言いなりにはなりたくないが、元本が大きく減ってしまうのは避けたい。金融商品の特徴を理解し、自身のポートフォリオが必要になってくる。
退職後何らかの仕事に就けば所得が生ずる。所得が生ずれば申告をしなければならない。年金を受け取れば所得になり、65 歳前後で控除金額が変わってくる。贈与を受けても保険金を受け取っても税金が発生する場合がある。
金融商品の売買、不動産の売買など全てに税金が絡んでくる。納税は国民の義務であり一生涯付いて回る手続きである。
いつか必ず相続を迎え、自身の保有する資産を配偶者や子供が受け継ぐことになる。現金や保険金は分割しやすいが、不動産は分割しづらい資産である。遺産分割で子供たちが後々もめるのは良く聞く話である。残された家族を思うと資産の多寡に関係なく、遺産分割には気配りが求められる。
新たなやりがいは簡単には見つからない
季節に応じて全国の名所や観光地がテレビに映し出されるが、風景と共に映っている人物は女性ばかりである。高齢者になると女性の数が多くなるが、男性は一体どこで何をしているのだろうか。
現役時代は自身の全てのエネルギーを仕事に注いできた。仕事では不条理なことや多くの矛盾にストレスを感じてきたかもしれない。会社の指示であれば単身赴任や海外赴任も受け入れてきた。親の死に目に会えないかもしれないが、会社の命を第一優先に考えてきた。
良くも悪くも会社は男性自身の生き甲斐や支えになっていた。家族のために身を粉にして働いて稼いできたと言いながら、自身が夢中になりそこで得られる感動を求めてきたのかもしれない。仕事と共に生き甲斐を失うことは恐ろしいことである。
かつて仕事で身につけた技術や能力を活かして、新たな仕事についても長続きはしない。求められる技術と持ち合わせている能力のギャップがある。またかつての会社で相当の役職についていれば、今さらこんな仕事は出来ないと自身のプライドが邪魔をする。
これまで疎かにしてきた地域の活動に参加しても、数年経てば役割は終了する。蕎麦打ちを修得しても、妻に新たなおもちゃと揶揄されて、他人に食べさせる機会もなく、たまに遊びに来る孫が喜ぶだけでは心は満たされない。小遣いを昼はパチンコで使い、夜は街に飲みに行くだけではあまりにも余生が長すぎる。
年をとって体力は多少落ちても気力は簡単に落ちない。退職したからといってエネルギーの源泉が途絶えるわけではない。若い頃から趣味を持っていれば良かったと嘆いても今さら仕方がない。退職後はこれまで現役時代に身につけた技術や能力そのまま活かすのではなく、自身の真の生き甲斐を見つけられる時間に充てたい。
現役時代にどこでどんな役職に就いていたかより、退職後に何をしてきたかによって個人の真の価値
が決まるという話を聞いたことがあるが、その通りだろう。
長野日報土曜コラム平成22年10月23日掲載
有限会社テヅカプラニング 手塚英雄
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